AIとプロフェッショナルの協業体制とは
-向佐さんに伺います。「士気とAIで誠実に」という言葉にあるとおり、フラーレンはAIネイティブな企業として、テクノロジーを活用する部分と、人が泥臭くやり抜く部分を融合させる仕組みを作っています。エンジニアの向佐さんがこの世界に入ってきた時に、どういった部分がAIやエンジニアリングの力で伸ばせると感じましたか。
向佐: 大きく2つあります。1つは、単純な作業の効率化です。
プロフェッショナルの皆さんがされている作業というのは、自分から見るとAIで解ける問題もあれば、実はAIを使わずにすぐ解ける問題も多い。
わかりやすいところですと、現場では数時間かけて手作業でExcelに打ちこんでいた作業が、自分がプログラミングしたら多分10分とか20分で解けてしまうだろうなと思うことも多々あって、非常にもったいないと感じていました。こういった部分をテクノロジーに馴染みがないプロフェッショナルでも使える形で標準化することによって、作業にかかる時間が減り、より本質的なところに集中できるように整備できると考えました。
もう1つは、「プロフェッショナルの技術・技法」の標準化です。
皆さんがプロフェッショナルとして同じ課題にアタックしていても、解き方が微妙に異なります。だからこそ、工夫されているポイントがそれぞれの中で閉じていて、共有されていない状態でした。ここをうまく共通値として、会社のインフラとして実装することによって、お互いのいいやり方が掛け算されて、より皆さんのアウトカムがどんどん増えていくだろうと感じましたね。

-今の話は個人についても、チームや組織についても言えるし、クライアントも巻き込んでいける話ですね。
向佐: そうですね。まだ解けていない問題もたくさんありますし、効率化を図って新しい価値を生む余白は非常に大きいと感じています。
由良: AIが奪う仕事はデスクワークと言われています。すなわち、単純な数字の打ち込みとか、チェックの作業です。5年後、10年後は間違いなく効率化されている領域ですが、2026年現在はほぼすべての企業においてデスクワークは大量に存在しており、AI Nativeを掲げる弊社も例外ではありません。
向佐さんが今やっていることは、人の作業をどう効率化できるのかをしっかり紐解きながら、会社の仕組みに落とし込み、業務の根本を見直していく部分で、一番本質的なことだと思っています。
向佐さんは、ビジネスサイドを徹底的に理解する姿勢があると思っています。
驚いたのが、人の話を聞く時に、絶対相手より目線を下げるんです。膝をついて話を聞く。
些細な点に見えますが、起こりがちなエンジニアリングとビジネスの対立構造を回避しながら、AI Nativeな企業を作っていく上では、こうした姿勢の部分での双方の歩み寄りが非常に大事です。
-そうした姿勢があるからこそ、人の作業をAIで効率化するプロセスで、自分のやり方にこだわる人や、自分のやっている仕事が奪われると感じる人とのハレーションが起きないのでしょうか。
坂本: そうだと思います。今あるものに対してAIを使って楽をしますとか、AIを使ってよりエンハンスメントしていきますという「日常のちょっと便利なアップデート」では、ハレーションは起きません。その次の段階として、テクノロジーになじみがないメンバーもAIを前提に業務そのものの改善を図る発想・姿勢をインストールしていく必要があります。自分のこだわりを一度手放さなくてはいけないこともあるでしょう。
向佐さんがリードするテクノロジーチームは、日常的にプロフェッショナルの各チームと協業を行います。お互いをリスペクトしながら、二項対立ではなくOne Teamとして新たな付加価値を作ることを、全員が意識していると思います。それがAI Nativeな企業としての我々の前提であり武器なのです。

今後の展望
-フラーレンのビジョンについても伺いたいと思います。「誰しもがアクセスできる最高峰の経営支援インフラ」という言葉を掲げていらっしゃいますが、プロフェッショナルとして得た知見を閉じた世界にとどめず、あえて社会に還元していきたい、と考える背景には何があるのでしょうか。
由良: コンサルティングやM&Aの業界は、情報のアービトラージ*が大きい業界構造だと感じます。経営戦略やM&Aというのは特殊な職域で、プロフェッショナルではない人にとって、質の高い水準で論点を整理し実行に移すことは非常にハードルが高い側面もあります。
この構図がAIの進化でいよいよ変わる重要な変換点を迎えています。
我々がやろうとしているのは、クライアントが正しい意思決定をするための判断材料を、会社として徹底的に提供することです。そのために、AIを使った効率化・高度化はマストです。
弊社では、従来のM&A業界・コンサルティング業界で閉じてしまっていたノウハウを、テクノロジーによって効率的に構造化して世の中に解放していくことを追求していきます。フェアで質の高い意思決定プロセスが業界全体に開かれていくきっかけになりたいと思っています。
*アービトラージ 情報を持っている側(アドバイザー)と、持っていない側(顧客)の『情報格差』を利用して利益を上げること。

- 今おっしゃっていた必要な情報を提供して、フェアで質の高い意思決定を増やしていきたいというお話と、いままで関わる中で感じられた日本の中小企業が抱えている課題について、何かリンクする部分はあるのでしょうか。
坂本: 日本の中堅中小企業というのは、全てのことにおいてリソースがない会社がほとんどです。それを改善するための情報資産も経験資産もない。これまで大企業が高額な費用を払ってアクセスしてきた情報資産、経験資産を、今の世にあるテクノロジーを使いこなすことで、世に開くことが可能と確信しています。
これにより、経営のリソース不足と、それにより起こっているあらゆる課題は、解決できる可能性が非常に大きいと考えています。
由良: 私たちが提供するのは、本質的には経営企画とかM&Aのチームを補完・代替する機能だと思っています。例えば、ヘッドハンティングのプラットフォームができたことによって、企業の採用に係る人事部のリソースが削減され、今まで採用できなかった人が採用できるようになりました。弊社のサービスによって、クライアントの経営企画やM&A機能を向上し、効率化するプラットフォームを準備・設計しています。
-そういった社会を皆さんがこれから作っていく中で、特に向佐さんがエンジニアとしてそこに関わっていく面白みを、どんな風に感じてらっしゃいますか。

向佐: そうですね。今世界は劇的に動いています。例えば2年前だとプログラミングにAIコーディングエージェントを使っている人はほとんどいませんでした。
ところが、去年(2025年)12月からほぼ周囲が驚くほどのスピード感で、技術が変化しています。
これは業界のビッグなチェンジで、今まで自分が3ヶ月4ヶ月かかっていたようなプロジェクトが、1~2日という次元での高効率でできるようになっています。
プログラミングではこの劇的な生産性の向上が既に起きていますが、コンサルティング、M&A、人材紹介といった、「人間にしか出せない介在価値」を追求していく事業ドメインにおいてAIイネーブルメントを実装していく可能性に面白さを感じています。
また、エンジニアとはまた質の違う、優秀な皆さんと働ける環境がシンプルに刺激的で面白いと感じています。
-フラーレンは今後組織が拡大し、メンバーも増えていくフェーズに入りますが、どのような仲間と一緒に仕事をしていきたいと考えますか?
坂本: Fullerene’s Wayに共感頂けることは非常に重要だと思っています。中でも「レバレッジ」が出来る人と働きたいと個人的には考えています。利他の精神を持ち、一人では届かないところに行くために、人が増えるごとに一人ひとりが持つ能力が、足し算ではなく掛け算になっていってほしい。多層的な強さを示す「フラーレン」という社名にもこれは通ずるところだと考えています。
由良: 私たちが展開するコンサルティングやM&A、人材といった事業領域は、人が表に出ていく限り、ストイックさやハードワークが求められます。
AIを始めとしたテクノロジーの活用でどれだけ高効率な組織になっても、「悩むよりも周りの助けを借りられる」資質は必要になります。
そうした資質は前提として備えた上で、プロフェッショナルとして高いレベルを追及し、テクノロジーによる変革を楽しめる方とご一緒したいと考えています。





